「衆徒」とは

「衆徒」とは

・ 藤原氏の氏寺である興福寺では、平安時代末期から、大和国の寺領荘園地主の内の有力者を、僧衆に準じて「衆徒(しゅうと)」と称し、神仏習合によって興福寺と一体化していた春日社の白衣神人である「国民(こくみん)」(元は南大和の国衙領を中心に、多武峯を核とした神人集団であったようだが、多武峯の力が衰えると、北大和にある興福寺に接近した)とあわせて、武力として組織した。この頃には、興福寺や東大寺が力をつけ、大和国に対する国司の支配は消滅してしまっていた。

・ 「衆徒」は、興福寺の僧であると共に、主に開発領主及びその子孫で荘官となるなど在地の領主(僧体をまとった大和武士)であり、「国民」(末社の神主を務めた大和武士)を含め、彼らは他の国の「国人(こくじん)」と呼ばれる存在に相当する。国人たちがしばしばその国の守護と主従関係を結んで自分の支配権の維持・発展を図ったように、大和の国人たちは、事実上大和の守護権を持つ興福寺の中に入り、「衆徒」として支配の一役を担った。「衆徒」は、このため、「国民」に比べて優越的な権力を与えられていたようである。


「衆中」とは

・ 鎌倉時代に入っては、「衆徒」の中から20名が選ばれ、4年間興福寺に在勤させ「衆中(しゅうちゅう)」(幕府将軍家の被官人)が組織された。更にその内の有力者1名ないし数名が、棟梁(事実上の大和の守護代)として全体を統括し、事務能力を備えた者2~3名が「沙汰衆(さたしゅう)」として外部との折衝・連絡などに当たった。衆中は、「官符衆徒(かんぷしゅうと)」、あるいは、「官務衆徒(かんむしゅうと)」と名乗り、またそう呼ばれることがある。

・ 「衆中」の権限には、「賃借の裁判・徳政令(金融業者に債権放棄を命じる)の発布」、「盗みの取り締まり」、「博打の取り締まり」などであった。このため、しばしば、警察と裁判所も兼ねていたようなものとも言われる。

(『尋尊御記』、『中世の奈良 都市民と寺院の支配』)



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◆応永21(1414)年6月20日: 室町幕府は、興福寺学侶・衆徒の訴えに基づき、衆徒・国民を京都に召し私合戦を停めるように誓わせた。この幕府が召した衆徒・国民の中に「筒井(戌亥脇)」と筒井氏の本家とも推測される「森屋筒井」の記載が含まれる。

 「官務衆徒

古市 番条 筒井(戌亥脇) 飯高 壺坂 井戸(戌亥脇) 豊田中坊 小泉 福智堂 竜田(戌亥脇) 矢田(但幼少) 六条 宝来 岸田 長柄中 杉本東 櫟原(戌亥脇) 菅原(東山田) 多田(東山内) 少歩(東山内) 中御門武蔵(戌亥脇) 今市 秋篠北 同所南 山田 平等坊 

 和州国民交名

越智 十市 片岡 箸尾 布施 万歳 岡 高田 楢原 吐田 倶尸羅 嶋 立野 森屋筒井 豊田(吐田庶子) 梶屋(布施庶子) 笛堂(布施庶子) 玉手(越智庶子) 坊城(同) 鳥屋(同) 加留(同) 新賀(十市庶子) 新(箸尾庶子) 柳本 山田(東山内) 福住(東山内) 中村(平田) 以上歟、」

(『寺門事条々聞書』応永廿一年六月廿日条)


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◆康正3(1457)年4月28日: 興福寺の一乗院もしくは大乗院の門主と主従関係を結んでいた衆徒の名前が挙げられている。筒井氏は、一乗院方の衆徒で筆頭に名前が挙げられている。

「一乗院家御坊人名字依次有記之、

筒井 龍田(大乗院二兼参) 山田 同戌亥 井戸 菅田 櫟原 小南 高桶 杉本東 六乗 岸田 唐院 秋篠尾崎 同南 鷹山奥 小泉次郎 池田下司 郡殿東下司 同西下司 幸前下司 木津執行、以上衆徒分

越智 布施 万歳 箸尾 高田 岡 片岡 細井戸 金剛寺 佐味 中村 嶋 桐谷 曽歩曽歩 平群新 兼殿庄屋 簀川下司 御陵(大乗院長川党内) 超昇寺下司(同) 吹田 同豊田 鳥屋 子嶋 宇賀尾 箸尾大門 岡今井 万歳南 同北井、以上国民分

大乗院家御坊人名字、

古市 小泉 同尾崎 番条 丹後庄 松立院 知足院 鞆田 同室 見塔院 法花寺奥 瓜生 北院 大安寺向 箕田 庵治辰巳 鳥見福西 今市新 森本 山村椿井 窪城 辻子 豊田 荻別所 福智堂 井上 長谷寺執行

              以上衆徒

十市 八田 楢原 十市新賀 立野 同吉井 同松岡 倶志羅 目安 出雲庄西下司 同中下司 同兵庫 同松田 吉備 柳本 南郷 小林 三嶋 窪 牟山 三谷 深河 辰市堀 長谷川一党(上下) 同糸井庄衆 山田      以上国民

炭電(山城国住)、土橋(同)」

(『尋尊大僧正記二 寺務方諸廻請』:康正三年四月廿八日条)

筒井氏同族研究会

大和の戦国大名・筒井順慶をはじめとする筒井氏を調査研究する団体です。 一族郎党の子孫や研究者だけでなく、筒井氏に興味のある方ならどなたでも歓迎します。 筒井氏の謎を一緒に解明していきましょう。

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